障がい者雇用率の改正
2023.2.1
障がい者の雇用について、障がい者雇用促進法では「従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の割合を「法定雇用率」以上にする義務がある」と定めています。法定雇用率については、同法43条1項で、対象の障がい者である労働者(失業者を含む)の割合を基準とし、少なくとも5年ごとにその割合の推移を勘案して設定することになっています。対象となる事業主の範囲は、従業員43.5人以上です。
令和5年度からは、新たな雇用率を2.7%とすることが労動政策審議会で答申されました。ただし、雇入れに係る計画的な対応が可能となるように、令和5年度は2.3%で据え置き、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%へと段階的に引き上げることになります。また、国および地方公共団体等については、3.0%(教育委員会は2.9%)となります。段階的な引き上げに係る対応は民間事業主と同様です。
なお、障がい者の雇用が一般的に難しいと認められる業種では、雇用する労働者数を計算する際に、一定の割合で労働者数を控除する制度があります。この割合を「除外率」といいます。しかし、この制度は障がいがあってもなくても特別視されることなく社会生活を共に営む観点から廃止される方向にあり、段階的措置として業種ごとに除外率を設定し、徐々に除外率を引き下げています。
今回、この除外率は一斉に10ポイント引き下げられることが決まっています。引き下げの時期は、障がい者雇用分科会が令和4年6月に出した意見書も踏まえ、雇用率の引き上げ施行と重ならないように令和7年4月となります。
「障がい者雇用法」の施策では、障がい者の希望や能力、適性を十分に生かし、障がいの特性等に応じて活躍することが当たり前の社会をめざし、障がい者雇用対策を進めています。それには民間の企業努力の積み重ねによる障がい者雇用の着実な進展があります。平成20年、雇用者数は32.6万人から平成30年には53.5万人となり過去最高を更新しました。しかし、国や地方公共団体の多くの機関において、対象障がい者の不適切な計上があり、法定雇用率を達成していない状態、国は2.50%のところ1.17%。地方公共団体は2.40%と届出され、再点検したところ2.16%と雇用率を満たしていませんでした。
これに対し、国は次の4点などについて、関係閣僚会議で基本方針を決定し、法的整備を視野に入れた検討を行うと表明しています。
- チェック機能の強化
- 法定雇用率の速やかな達成に向けた計画的な取組
- 国・地方公共団体における障がい者の活躍の場の拡大
- 公務員の任用面での対応
また、事業主向けには以下の支援策が講じられることになっています。
- 雇入れに必要な一連の雇用管理に対する相談援助の助成金が創設され、雇入れや定着支援の充実を図ります。
- 昨年9月、都道府県労働局に対し雇用率未達成企業の増加や除外率設定業種における雇用障がい者の不足の増加が見込まれることからハローワークが、地域障がい者就業センター等の関係機関と連携し、採用の準備段階から採用後の職場定着まで一貫したチーム支援に努めます。
- 令和5年の予算案では、就業支援コーディネーター(ハローワークで企業の支援に取り組む人)を増員し、障がい者の雇入れ・定着支援を行う障がい者就業・生活支援センターの人材確保と支援力の強化のため、担当者の処遇の改善を盛り込んでいます。
(この項終わり)