共同センターロゴ小今月の話題(2022年11月)

賃金を電子マネーで支払う「デジタル給与」令和5年4月より解禁へ

2022.11.1

労動基準法第24条1項で、原則的に労働者のへの給与は労働者に直接その全額を支払うと定めています。使用者は、労働者の同意を得た場合には、1.当該労働者が指定する銀行その他の金融機関へ当該労働者の預金又は貯金への振り込み、または、2.当該労働者が指定する金融商品取引業者に対する当該労働者の預り金への払い込みにより賃金を支払うことも認められています。

しかしこの度、厚労省の労働条件分科会において、上の2つに加えて、労働者の同意を得た上で、一定の要件を満たした場合には、労働者の資金移動業者の口座への賃金支払いも可能とすることを検討し、答申しました。近年、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進んでおり、いわゆる「〇〇ペイ」などの名称で知られる各種の電子マネーの口座への資金の移動を、給与の受け取りに活用するニーズも一定程度見られるようになったことを受けたものです。

「資金決済法」に規定する第二種資金移動業を営む資金移動業者が、以下の8つの要件を満たし、厚生労働大臣の指定をうけ「指定賃金移動業者」になれば、労働者が賃金の払込先として指定、使用者は資金移動によって賃金を支払うことが可能になります。

  1. 賃金支払いに係る口座の残高(口座残高)の上限を100万円以下に設定していること。または100万円を超えた場合でも速やかに100万円以下にするための措置を講じていること。
  2. 破たんなどにより口座残高の受け取りが困難となった時に、労働者に口座残高の全額を速やかに弁済することを補償する仕組みを有すること。
  3. 労働者の意に反する不正な為替取引その他の当該労働者の責めに帰すことが出来ない理由により口座残高に損失が生じたときに、その損失を補償する仕組みを有していること。
  4. 最後の口座残高が変動した日から、特段の事情がない限り、少なくとも10年間は労働者が口座残高を受け取ることが出来るための措置を講じていること。
  5. 賃金支払いに係る口座への資金移動が1円単位でできる措置を講じていること。
  6. ATMを利用すること等、通貨で賃金の受け取りができる手段により、1円単位で賃金の受け取りができるための措置及び少なくとも毎月1回はATMの利用手数料等の負担なく賃金の受け取りができるための措置を講じていること。
  7. 賃金の支払いに係る業務の実施状況及び財務状況を適時に厚生労働大臣に報告できる体制を有すること。
  8. 賃金の支払いに係る業務を適正かつ確実に行うことが出来る技術能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。

資金移動業者の口座へ賃金支払いを行う場合には、労働者が銀行口座または、証券総合口座への賃金支払いも併せてできるようにすると共に、当該労働者に対して資金移動業者の口座への賃金支払いについて必要な事項を説明した上で、当該労働者の同意を得なければなりません。

本制度の施行期日は令和5年4月1日となっています。その他の詳しい要件は、根拠条文である労働基準法第24条第1項を参照してください。

給与をデジタル払いにすると、企業は当然そのメリット、デメリット、そのリスクを考慮し検討しなければなりません。しかし、デジタル化が進む未来も見据えると、デジタル支給と銀行振込の二重運用は避けられないかもしれません。急がずに、情報を収集し慎重に検討を重ねることが望まれます。

(この項終わり)