共同センターロゴ小今月の話題(2020年2月)

「フレイル」を知っていますか

2020.2.3

 ヒトの寿命が延びるのは手放しで喜ぶことばかりではありません。最近、高齢者で独居の人、認知症の人、その予備軍と言われる人、要介護の人、そして「フレイル」の人が急速に増加していることが報道されています。

 「フレイル」という言葉は、加齢にともなって、心身の機能が低下することで、健康を害しやすい状態であることを言います。英語の「Frailty」という語に対して、従来の「虚弱」や「老衰」といった和訳に代わる名称として、2014年に日本老年医学会が定めました。

 少子高齢化が進み、社会保障費の増加や働き方改革で、日本では65歳を過ぎても働ける制度整備が急がれています。しかし、高齢者が働き続けるにはそれなりに健康でなければ務まりません。ヒトは平均余命が尽きるまで、自立した生活ができる「健康余命」と、障がい・要介護の期間である「不健康余命」の期間を経るといいます。高齢でも働き続けるには、健康余命を伸ばし、できるだけ長く、心身ともに自立した活動的な状態で生活することが重要になってきます。

 このことは「生活機能を維持する」と言い換えることができます。生活機能とは、国際生活機能分類(ICF)で次のように説明されています。

  1. 生命レベル(心身機能構造のことで、心と体、生活の基本動作の働きが保てる)
  2. 生活レベル(活動のことで、生活行為、身の回りの行為、家事、仕事等ができる)
  3. 人生レベル(参加できていることで、家庭内の役割り、仕事、地域社会への参加)

 高齢になっても働き続けるということは、これらの機能を65歳から寿命の90歳ごろまで保つということでもあるのです。そして、これらの生活機能を加齢によって維持できなくなった状態が、「フレイル」ということになります。

 一般高齢者の生活機能の衰えは、現在82歳と言われています。90歳を迎えると約半分の高齢者は要介護レベルに衰えています。もちろん個人差は大きく、生活機能評価では、持病を持ちながらもコントロールしている方も多くいます。実際には、「フレイル」の状態である人も、そうでない人もいるのです。

 高齢期の生活機能に影響する二大原因の一つは「疾病」です。ガンのほか、メタボ(メタボリックシンドローム:代謝症候群)、高血圧、糖尿病などが原因となる脳卒中、心臓病、腎臓病等があります。もう一つが「老化」で、認知・口腔・筋力/歩行の機能低下、低栄養、閉じこもり、抑うつなどがあり、これらが原因で生命・生活・人生のレベル低下を招き、介護が必要となります。

 これらの疾病や老化は高齢期に重症化することは誰もが経験上、認識しています。そして若い時からの健康管理が大切だとも感じています。一方で、現役世代は仕事や子育て、介護などに追われ、健康管理は二の次になりがちです。しかし、65歳以上の前期高齢期に生活習慣病の管理を適切に行ったり、75歳以上の後期高齢期に老化症候群の予防をしっかり行ったりすることでも、フレイルを予防する役に立ちます。

 喫煙、高血圧、抑うつ、低栄養、低体力、社会とのかかわりが薄いこと、という高齢期特有の6つの問題は、フレイルにつながる要因だと言われています。フレイル予防とは、よく食べ、良く動き、よく話す(よく繋がる)こととも言えます。それに、口腔ケアを行って「口の健康」を保つことも重要だと言います。誰もが、いつからでも、その気になればフレイル予防に取り組めるのです。

 寿命が延び、高齢期が人生に占める割合はどんどん大きくなっています。「フレイル」を避けて通ることはできないのでしょうが、その期間を短くできるかどうかは、私たちの暮らしかた次第といえるでしょう。

(この項終わり)