共同センターロゴ小今月の話題(2019年12月)

障がいのある方のための「就労パスポート」

2019.12.5

「就労パスポート」とは、障がいのある方が、働く上で自分の特徴や希望する配慮などを整理することで、就労や職場定着の促進を図るための情報ツールとなるものです。支援機関や職場における必要な支援などに就いて話し合う際に活用できます。

 これまでに用いられてきたコミュニケーションツールは、それぞれのツールは独立性、専門性も高いのですが、情報が散逸しやすく作成負荷も高いものだったそうです。それで「障がい」というものの性質について雇用する側の個別性への理解不足から適切でない対応がありました。一方、障がいのある本人が自分自身も障がいへの理解を深める必要がありました。労使双方で明らかになっているこれらの課題を具体的に解決するために必要な情報を整理しまとめたのが「就労パスポート」だといえます。

 障がいのある方の就労課題の一つは、職場定着率の低さです。つまり離職率が高いという点です。就職1年後の職場離職率は、精神障がいのある方50.7%、発達障がいのある方28.5%、身体障がいのある方39.2%、知的障がいのある方32.0%です。中でも精神障がいのある方は就労1年以内に2人に1人が職場を辞めています。障がいのある方の離職率の高さの要因の一つが「障がい」というものへの向き合い方や、一括りに「障がい」と表現するものの、いずれの障がいもその障がいの内容や程度、何にどのような要因がともなうのか差異があるということです。つまり就労の場で必要となる配慮は当たり前のことですが一人ひとり個別なのです。

 就労パスポートには、就職・職場定着にとって重要な項目が掲載されます。支援機関と一緒に作成する中で、次のようなメリットがあります。

  • 自分だけでは気づけなかった特徴を把握することができます。
  • それによって、自分の特徴をより理解することができます。
  • 支援者に自分の特徴を理解してもらい、自分に合った支援を受けやすくなります。

 就労パスポートは、自分の特徴を相手(自分の希望する範囲)に説明するためなどに使います。実際には、就職活動段階や、他機関(就労パスポートの作成支援を受けた支援機関とは異なる支援機関)の利用登録時に、自分にとって必要な支援内容を支援者と一緒に検討します。又、職場実習前や採用面接時に、職場担当者へ説明し、職務の設定などの参考にしてもらえます。就職後、現場責任者や上司・同僚などへ説明し、体調把握、作業指示、コミュニケーションなどにおいて参考にしてもらえます。また、就職して一定期間経過後、就職初期に講じられた配慮の実施状況、就職後の状況変化に応じた見直しの必要性などについて、上司・同僚、支援機関と一緒に確認できます。

 職場定着を図る上では、「就労パスポートを支援機関と共有する→支援機関から、就労パスポート(=自分の特徴)に合った支援を受ける」というように、支援機関の様々な支援も一緒に活用することはより効果的でしょう。そのため、先ずは「自分の住んでいる地域にどの様な支援機関があり、どのように活用しながら就職活動を行い、職場定着を目指していけるのか」について、最寄りのハローワークでも相談できます。その上で、「就職活動や職場定着に向けて、働く上での自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮などを整理したい」という場合に、地域の支援機関を活用しながら就労パスポートを作成します。

 厚生労働省のホームページでは、次のような利用者からの声が紹介されていました。

障がいのある方の声

「支援者と話し合いながら就労パスポートを作成する中で自分のことが整理でき、自己理解につながりました。自分の特徴と今までよりもうまく付き合いながら働けそうです」

「採用面接の時や、職場で環境が変わる時(上司の異動時など)に、就労パスポートの内容を伝えることで、自分のことをよりわかってもらいやすくなると思います」

事業主の声

「就労パスポートの記載内容を参照することによって、関係者(障害のある本人、人事担当者、上司、支援機関)が共通の認識を持ちながら本人の特徴に応じたかかわり方などに就いて話し合うことができます」

支援機関の声

「障害のある本人と一緒に作成することで、本人の状況をより深く理解できました」

「チェック項目が具体的に複数あるので、障がいのある本人、支援機関、事業主とで話し合う際に、共通認識を持ちやすいです」

 障がい者就労の職場定着にとって就労パスポート作成は、一旦作成したら終わりではありません。就職活動、施設内訓練、職場実習、職場での体験をもとに、障がい者本人、或は他者の意見などを基に、新たに気づいたことを支援機関や職場の担当者と相談しながら以前書き込んだ内容を更新できます。 「就労パスポート」が、障がいのある方の働き方を広げ、働き続けられる職場を選択する一歩として、また社会や職場が、障がいを持って生きる方への理解を深め支援できることを望みます。

(この項終わり)