共同センターロゴ小今月の話題(2019年9月)

厚生労働省の改革

2019.9.1

 今年2月、通常国会の答弁で、厚生労働省(以下厚労省)の統計数値に不正が行われていると指摘された報道は記憶に新しいことでしょう。しかし、この不正と指摘された統計数値の何が、どのように正確ではなかったのかについて、政府はきちんと説明しないまま、誰も責任を取らずうやむやのままです。

 この国民統計調査数値の不正問題に取り組む厚労省が8月20日に、「厚労省統計改革ビジョン2019」(仮称)有識者懇談会の提言を公表しています。懇談会の目的のひとつは、「政策立案や学術研究、経営判断の礎として、常に正確性を求められる公的統計の重要性に対する基本認識を明確にすること」です。その内容を紹介します。

 始めに、懇談会開催の趣旨として、作成するすべての統計が真に統計ユーザや国民の視点に立った統計を作成する組織へと生まれ変わるために、広く外部有識者の意見を取り入れ、厚労省が政府全体の公的統計を牽引するような「統計行政のフロントランナー」となることを目指し統計改革ビジョンを策定すると述べられています。

 まず、統計改革に向けた基本的考え方として、「統計情報は、国民から負託された「財産」である」という考え方を確認しています。次に、「EBPM(証拠に基づく政策立案)を推進するとともに、統計の利活用を通じて、統計の質を向上させていく」そうです。そして、「統計の仕様や品質に関する情報の開示は、適切な利用及び利用者からの信頼確保に不可欠なものであり、透明性の確保が図られる必要がある」というものでした。

 今回の統計問題の整理を踏まえた再発防止策は、総務省統計委員会や統計改革推進会議などの政府全体の見直しの方向性と整合性をとりつつ、日本統計学会や社会調査協会などの各種の指摘や提言についても幅広く取り込むとしています。取り組みとして

  1. 組織の改革とガバナンスの強化 ⇒ 問題を引き起こした組織の在り方などの見なおしに関する取り組み
  2. 統計業務の改善 ⇒ 統計業務の在り方やその進め方などに関する取り組み
  3. 統計に関する認識 ⇒ 職員の資質・能力や法令遵守意識など、職員ひとり一人に求められる取り組み

などを挙げ、防止策の詳細、又この統計改革取り組みへのビジョンのフォローアップの詳細や、統計行政のフロントランナーを目指す取り組みの詳細も記載されています。

 これらの提言から、厚労省職員の統計改革への取り組み方、働き方により統計調査の数値が信頼されるに足るものとなることが先ずは望まれます。

 8月26日、厚労省改革を進めている厚労省の職場の現状が、厚労省で働く20代、30代を中心とする若手チームによる「若手緊急提言」で明らかになっています。厚労省に18あるすべての職種(人事グループ)から構成された若手職員38名が中心となり、厚労省の業務・組織の在り方についての提言書を厚労大臣に手渡したのです。提言の中身は、取りまとめの期間が短く課題の取り組みが不十分としながらまとめた提言のいくつかを紹介します。

  1. 圧倒的に不十分な人員体制による業務遂行でのチェック体制の不備。結果的に安易な「前例踏襲」も。コールセンタ―ではひと月10万件の電話対応を4人で担当、応援の職員の長時間労働の原因にも。⇒マネジメントの強化と業務量に応じた人員配置を。

  2. 業務量の多さでのアンケートでは、1位は国会業務が63%いて、2位が電話対応だと42%の人が回答。国会議員の質問書提出の遅延と、答弁資料審査待ちの無駄な待機時間。⇒国会に対する申し入れを。

  3. 職場ハラスメントを受けた職員は46%いるにも拘らず、相談先が分からない、部局の相談員に相談しづらい、人事上の不利益を考慮して相談せずが合わせて54%。⇒省内外の相談窓口の設置と周知。

  4. 各省庁比較でも暗くて暑い職場(机側温度は31度以上)の実態解消を。⇒エアコン稼働の最適化。照明を明るく。執務空間のゆとりを。

など厚労省の業務や組織的問題点が91ページにまとめられ、対策案が提案されています。

参考:労働省改革若手チーム

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/youth_team.html

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 特記すべきは、今年2月の国会答弁の毎月勤労統計調査の不適切な取扱い、昨年の裁量労働制データの不適切な比較事案や報告書などの件では、個人の仕事量の多さにプラスして不祥事の対応に追われ、人手がさらに取られるという状況だったそうです。その中で過剰労働で心身の健康が損なわれ、離職者も出ている現状が明かされています。

 働き方改革の旗振りの足元での若手チームの緊急提言が事実ならば、厚生労働省で働く職員の危機的状況を、厚労省自らがどう改革していくのか、働き方改革モデルを示してほしいものです。

(この項終わり)