外国人労働者の雇用管理の改善等の指針に関する諮問
2019.4.2
厚生労働省は2月25日に開催された「第85回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会」資料をHPで公表しています。議題は、『「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」の一部改正案について(諮問)』などです。
外国人労働者に関しては、2018年7月6日より雇用対策法が改正され、『外国人労働者を雇用する事業主は、外国人がわが国の雇用慣行に関する知識及び求職活動に必要な雇用に関する情報を十分に有していないこと等にかんがみ、その雇用する外国人がその有する能力を有効に発揮できるよう職場に適応するための措置の実施、その他の雇用管理改善を図るとともに、解雇等で離職する場合の再就職援助に努めるべきもの』とされています。「雇用対策法第8条」
その上で上記の指針では、外国人労働者が労働契約の締結の際に、労働条件を母国語や平易な日本語等で説明することなど、外国人労働者の雇用管理全般にわたる改善を求めています。
主な改正内容
- 募集・採用について
- 違約金、保証金の徴収等を行う職業紹介業者からあっせんをうけないこと
- 労働条件の変更明示等を母国語や平易な日本語により外国人労働者が理解できるように行うこと
- 労働条件・安全衛生等について
- 労働条件の明示: モデル様式を活用したり、母国語や平易な日本語等での説明をする。
- 適正な賃金の支払い: 最低賃金額以上の賃金を支払い、又基本給、割増賃金等の賃金について適正に支払う。労使協定に基づき食費、居住費等の控除を行う場合、不当な控除額にならないようにする。強制貯金は禁止する。
- 適正な労働時間の管理: 時間外・休日労働の上限規制を厳守し、労働時間の状況は客観的方法で把握する。年次有給休暇は付与する。
- 関係法令等の周知: 就業規則、労使協定を周知する。
- 事業の附属寄宿舎を適正化する。
- 雇用形態又は就業形態に関わらない公正な待遇の確保: 正社員と非正社員との間の不合理な待遇差や差別的扱いは禁止し、待遇差の内容・理由等の説明義務あり。
- 安全衛生の確保: 長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェック、母性保護に関する措置を実施する。
- 解雇・雇止め: 解雇・雇止めが認められない場合があることに留意すること。解雇制限期間があることに留意すること。妊娠・出産等を理由とした解雇などの禁止。
- 労働保険・社会保険について
- ・労働保険: 労働保険手続きについて、本人や家族等からの相談に応じること。暫定任意適用事業所における、労働者の希望に応じた加入の申請。
- 社会保険: 離職時の健保の被保険者証の回収と国民健康保健・国民年金への加入支援。脱退一時金についての留意事項。傷病手当金や障害年金についての周知。
- 人事管理・生活支援について
- 人事管理: 社内規定等の多言語化。評価・賃金決定、配置等の人事管理に関する運用の透明性・公正性の確保。
- 生活支援: 地域社会での行事や活動に参加する機械を設けるよう努めること。行政機関、医療機関、金融機関等に関する情報提供等、安心して日常生活を営むための支援。
- 苦情・相談体制の整備
- 帰国等の援助: 帰国費用を支弁できない場合の援助。一時帰国を希望する場合の休暇取得への配慮
- 多様性への配慮
- 請負を行う事業主に関する事項: 業務を行う事業所内における適切な管理。安定的な雇用関係の確保。
- 在留資格に応じた措置について
- 特定技能について: 雇用契約の基準、支援、届出等の義務に留意すること。
- 留学生について: 新卒採用等にあたり、在留資格変更が必要であることに留意すること。インターンシップの適正な運用。アルバイト等については資格外活動の許可の範囲内で就労させること。
外国人労働者の受け入れには、実習生、研修生、留学生のアルバイトを含めて日本の経済や社会に極めて多岐にわたる大きな影響を与えるものです。外国から「労働力」を求めたとしても、受け入れるのは一人ひとりの「人間」です。外国人労働者にも日本人と同様に人権が保障されるべきです。外国人労働者の受け入れには、その家族や、文化的、社会的背景に配慮しつつ、問題が生じたらその解決に向けて絶えず努力を続けることが必要でしょう。
(この項終わり)