高齢者雇用に関する企業調査から
2016.8.4
わが国は、人口減少社会を迎えており、働く意欲と能力のある高齢者が、その能力を発揮して、希望すればいくつになっても働くことができるような環境整備が課題となっています。
これまで、年金の支給開始年齢の引き上げ等もあり、65歳までの雇用確保(継続)に力点が置かれがちでしたが、今後、65歳以上、更に70歳以上の高年齢者が企業や地域で一層活躍することも重要な課題となっています。
このような問題意識から、高齢者の活用も含む企業の雇用管理について、企業アンケート調査(独立行政法人労働政策研究・研修機構)から見えてきたことを整理してみました。
60歳前半層(60歳以上〜64歳以下)の継続雇用者の雇用形態をみると、「嘱託・契約社員」(60.7%)が6割を超えています。正社員を挙げた企業は34.2%と、回答企業全体の約3分の1である。「パート・アルバイト」を挙げる企業は約2割、グループ・関連会社等で継続雇用された従業員(出向・転籍)を挙げる1000人以上の企業は2割に達しています。
業種別にみると、運輸業では「正社員」を挙げる企業が50.1%に達していました。対照的に金融・保険業で「正社員」の回答率は9.4%にとどまっていました。
仕事内容については「定年(60歳ころ)前と全く同じ仕事」(39.5%)、「定年前と同じ仕事であるが責任の重さが変わる」(40.5%)が集中していて、約8割の回答企業は、定年前後で仕事の内容そのものは変わらないと答えています。
今後の高年齢者賃金制度の在り方について平均的な年収も聞いてみると、約3割の回答企業からはこの質問の回答は得られなかったそうです。7割強の回答があった企業では「300万円以上400万円未満」が最も多く該当し、1000人以上の企業では、400万円以上500万円」の割合がやや高くなっていました。
賃金の在り方について「定年後の高年齢者も、評価制度に基づき賃金を決めるのが望ましい」かどうか聞いたところ、肯定的解答「そう思う、ややそう思う」の割合が高く(56.8%)、次に「高齢期だけでなく若年期も含めた全体としての賃金制度として考えるべき」(51.7%)と考える企業が半数を超えていました。
また、65歳以上の高年齢者が就いている仕事は、専門・技術的な仕事が(40.1%)「管理的な仕事」(27.3%)と、専門的なスキルをもっている者は、年齢が高くなっても、そのスキルの特殊性ゆえに企業に雇用される確率が高いことがうかがえます。
高年齢者(65歳以上69歳以下)の雇用確保に必要になると思われる取り組みを企業に聞いてみると「高年齢者の健康確保措置」が(34.9%)が最も多く、「継続雇用者の処遇改定」(31.3%)、「特に必要な取り組みはない」(26.8%)、「新たな勤務シフトの導入」などとなっていました。
これからは、生涯現役を目指すには自身の健康管理と共に、企業の健康確保の取り組みが必要になってくるようです。
(この項終わり)