わかものと社会保障制度
2016.1.4
今年の夏の参議院選挙で、新たに選挙権を得る10代の若者を対象とした、NHKの世論調査(無作為3000人郵送)が昨年の11月12月に初めて行われました。その調査で、日本の政治の在り方にどの程度満足しているか尋ねたところ、「満足している」と答えた人24%、「満足していない」が74%だそうです。
また、政治に関するテーマで今興味あるものを複数回答で尋ねたところ、「雇用・労働環境」が53%で最も高く、次いで「年金や医療等の社会保障」が49%。「景気対策」48%となり、政治に対して大いに関心を寄せていました。そして、「社会保障が充実するなら、税負担が増えてもよい」が63%は、「社会保障が後退しても税負担が少ない方が良い」の33%より多いのが目を引きました。
そこで、我が国の社会保障制度の仕組みについて整理してみました。社会保障制度を目的別に分類すると次のようになります。
- 社会保険
- 医療保険(国民健康保険・組合健康保険・船員保険・公務員共済組合)
- 年金保険(国民年金・厚生年金・公務員共済組合)
- 業務災害補償保険(労働者災害補償保険・船員保険・公務員災害補償保険)
- 雇用保険(雇用保険・船員保険)
- 公的扶助
- 生活保護(生活扶助・教育扶助・住宅扶助・医療扶助・出産扶助・介護扶助・生業扶助・葬祭扶助)
- 社会福祉
- 児童福祉(母子保健・児童福祉・母子福祉)
- 障害者福祉(身体障害者福祉・精神薄弱者福祉)
- 老人福祉(老人保健制度の中に含まれる)
- 老人保健・医療・福祉
- 老人保健制度(医療給付)
- 老人保健(医療以外の保健・老人保健施設・訪問看護制度)
- 老人福祉(在宅福祉・老人福祉施設)
- 介護保険制度
- その他の社会保障
- 公衆衛生・医療(疾病対策・健康増進対策・保健所・環境衛生・病院と診療所)
- 恩給・戦争犠牲者援護(軍人恩給・遺族給付・障害給付)
社会保険は様々な事故に対する給付を目的とした強制加入の制度です。保険事故の種類によって4種類の制度があります。
公的扶助は生活困窮者に最低限度の生活を保障し、自立を助ける制度です。
社会福祉は生活上のハンディキャップを持つ人を支援する制度です。支援対象者に応じて3種類に分けられます。
老人保健・医療・福祉は老後の健康と適切な医療を確保するための制度です。
その他の社会保障制度には次のようなものがあります。
このように見てみると社会保障制度がいかに大きな仕組みになっているかが解ります。この仕組みを支えているのは私たちが負担する税金と保険料なのですが、わが国における急激な少子高齢化の進展は負担と給付の関係に大きな影響を及ぼすことになります。
合計特殊出生率は1.29にまで落ち込み、さらには人口の増加率が0.11%と過去最低になりました。
総人口は2年後にピークに達し、3年後からは減少に転じると推計されています。出生者数が過去最低を更新し、生産年齢人口(15歳才以上65歳未満)も0.3%の減少となる一方で老年人口(65歳以上)は2.32%増加しています。総人口と生産年齢人口の減少は経済規模の縮小を通じた「負担」の減少に繋がりますし、老年人口の増加は「給付」の増加を意味します。減少する「負担」を増やし、増加する「給付」を減らしてバランスを保とうとするだけでは社会保障制度の基盤が崩壊してしまいます。
今後は社会全体が縮小に向かうことを前提とした制度のリストラクチュアリング(事業の再構築、事業の構造変革を行うこと、事業見直し)が是非とも必要です。
(この項終わり)