「確定拠出年金」制度導入企業増加の背景と法改正の動き(年金問題を考える その15)
2015.6.4
「確定拠出年金」とは、国民年金や厚生年金などの公的年金に加えて、老後の貰える年金を増やせるようにする年金制度です。自分の判断で資産運用<投資信託・預貯金・保険商品などの金融商品>の中から自分で選んで投資する年金制度です。
今までの「確定給付型の企業年金」では、将来受け取る金額を決めてお金<掛金>を出す<拠出する>ところから運用までを会社側が行ってきました。しかし、「確定拠出年金」はお金<掛金>を出す<拠出する>ところを会社が約束し、加入者自身が個別に運用を行い、将来受けとる給付金は個人の運用次第となるものです。
厚生労働省の調べによると、大企業を中心に確定拠出年金(以下、「DC」)制度を導入する企業が増えており、政府が目標としている2万社を近く達成する見通しになったとのことです。今後、中小企業や公務員、主婦等にも、DC活用が広く期待されています。
DC導入企業が増えている要因として、3つのことが考えられています。
- 企業負担が少ないこと
- 政府による導入の後押しがあること
- 運用環境が好転したこと
年金給付額が確定されていて、運用利回りが予定より下回った場合、その差額を企業が負担しなければならない確定給付年金(以下、「DB」)と異なり、DCは穴埋めしなければならない義務がありません。
政府は、DCの非課税になる掛金額の上限を引き上げ、導入の後押しをしています。
日経平均株価の上昇や、外貨で運用した場合の円安による含み益増がありました。
政府は、公的年金を補う私的年金の柱としてDCを拡充する方針で、以下の内容で今通常国会に法改正案を提出しています。
- 企業年金の普及・拡大
- 事務負担等により企業年金の実施が困難な中小企業(従業員100人以下)を対象に、設立手続等を大幅に緩和した「簡易型DC制度」を創設する。
- 中小企業(従業員100人以下)に限り、個人型DCに加入する従業員の拠出に追加して事業主拠出を可能とする「個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度」を創設する。
- DCの拠出規制単位を月単位から年単位とする。
- ライフコースの多様化への対応
- 個人型DCについて、第3号被保険者や企業年金加入者(企業型DC加入者については規約に定めた場合に限る)、公務員等共済加入者も加入可能とする。
- DCからDB等へ年金資産の持ち運び(ポータビリティ)を拡充する。
- DCの運用の改善
- 運用商品を選択しやすいよう、継続投資教育の努力義務化や運用商品数の抑制等を行う。
- あらかじめ定められた指定運用方法に関する規定の整備を行うとともに、指定運用方法として分散投資効果が期待できる商品設定を促す措置を講じる。
当然のことながら「確定拠出年金」の運用にはリスクが伴います。その運用期間は長いので、目先の相場変動だけに左右されずに長期的視野が必要になります。公的年金などの定年後の収入や所有の資産・負債・家族構成などをベースにマネープランを策定し、自身のリスク許容度を判断しなければならないでしょう。
何より、運用商品のリスクとリターンを正しく理解してから選ぶなど、慎重な「確定拠出年金」制度利用が望まれます。 さらに、運用商品のリスクとリターンを正しく理解してから選ぶなど、慎重な「確定拠出年金」制度利用が望まれます。(この項終わり)