共同センターロゴ小今月の話題(2014年5月)

「非正規社員の正社員化」の動きと「限定正社員」

2014.5.1

 先日、衣料専門チェーン「ユニクロ」を運営する株式会社ファーストリテイリングが、現在約3万人いるパート社員・アルバイト社員のうち、半数以上の約1万6,000人を今後2〜3年かけて正社員に登用していくことを発表したとの報道がありました。

 同社以外にも、流通業や外食産業などにおいて、大手企業を中心に「正社員化」の動きが広がっているようです。

 この「正社員化」の広がりの背景には、以下のような企業の思惑があるようです。

  • 経験豊富な非正規社員のノウハウを活用したい
  • 待遇改善によって優秀な人材を定着させたい
  • 景気回復の影響による人材不足状態を解消したい
  • 社員のやる気をアップさせて業務の質を高めたい

 なお、ファーストリテイリングでは、勤務地限定(店舗限定)で働くことができ、雇用期間に定めのない「限定正社員」の仕組みを取り入れるとのことです。

 この「限定正社員」は、正社員と非正規社員の中間に位置する雇用形態であり、勤務地の限定のほか、職種・職種や労働時間などを限定するものもあり、最近では「多様な正社員」や「ジョブ型正社員」などとも呼ばれています。

 現在、「限定正社員」の仕組みを積極的に取り入れていこうとする政府・厚生労働省の動きがありますが、何らかの「限定」があることにより、通常の正社員よりも待遇(賃金水準)が低く設定されることが一般的です。

 限定正社員には、育児や介護が必要なため「自宅の近くでしか働けない」「長時間は働けない」等、正社員として働くことに何らかの制約のある人に対して「正社員」の道を開くメリットがあるとされています。

 しかし、「賃金を低く抑えるための口実として使われる」「通常の正社員よりも解雇されやすい」などといった懸念の声も挙がっています。

 留意すべき点は、事業所の閉鎖で勤務地が消滅したり、その職種がなくなった場合に解雇はやむを得ず、解雇されやすい仕組みを広げるのではないかという懸念です。何らかの労使双方が納得いくようなルールの整備は不可欠ですし、限定正社員と正社員の間の処遇の均衡を図る法律の整備も必要でしょう。

 課題としては、限定正社員の雇用ルールに関わる雇用ワーキング・グループの提言が参考になりそうです。提言は以下の通りです。

  1. 限定正社員の位置づけと働き方の明確化
    • 就業規則・労働契約で、限定正社員の位置づけと働き方の中身を明確化する法的ルールの整備
  2. 限定正社員の解雇を巡るルール
    • 就業規則の解雇事由に「就業場所及び従事すべき業務が消失したこと」を追加することを想定
    • 現行の解雇ルールを前提に、職務や勤務地が消失した限定社員の解雇が認められる条件について、判例を整理し、労使や司法関係者のコンセンサスを形成(立法化、解釈通達によるルールの明確化も視野)
  3. 従来型の正社員の労働条件を巡る問題
    • 従来型の正社員と限定正社員の不合理な労働条件の相違を禁止する法的ルールを整備
    • 従来型の正社員と限定社員の相互転換促進法を法的ルールの整備も含めて検討
  4. その他
    • 同一企業内で従来型の正社員から限定社員への転向を行う場合、労働者の合意を前提とすることを再確認
    • 限定正社員の成功事例を収集し、解雇管理の留意点やモデルを提示

 提言は更に、国の支援にも言及しています。限定正社員が雇用契約を打ち切られる場合に備え、在職中から利用できる技能形成支援、専門性や技能を「見える化」する職業能力評価制度の整備・拡充など、限定正社員の転職を支える政策の拡充が課題だとしています。参考にして大いに議論を深めてもらいたいものです。

(この項終わり)