共同センターロゴ小今月の話題(2014年1月)

「アルコール健康障害」に関する基本法が成立

2014.1.5

 この年末年始にかけ、アルコールをたしなむ機会が増えた人は多いでしょう。日本では「酒は百薬の長」「社会の潤滑油」「飲みニケーション」などと言われ、アルコール飲料がさまざまな場面で活用されています。しかしその一方で、社会が飲酒に甘く、アルコールの過度な摂取が多くの問題を招き悲劇を生じさせていることを忘れてはなりません。最近では、肝臓病、膵臓病、循環器疾患、メタボリック症候群、アルコール依存症、アルコールが関係する睡眠障害・うつ ・自殺、認知症などに大きな影響を与えているのです。

 「特定秘密保護法」が大きな話題となった臨時国会(会期:2013年10月15日〜12月8日)でしたが、本国会では「アルコール健康障害対策基本法」という法律が可決 ・成立したことはあまり知られていないようです。この法律は、超党派の「アルコール問題議員連盟」により法案提出がなされたもので、法案成立により、今後、アルコール健康障害の発生・進行および再発の防止につながることが期待されています。

 アルコール関連の問題は、飲酒運転・DV(ドメスティックバイオレンス)・児童虐待・傷害といった犯罪、未成年飲酒、飲酒の強要(アルコールハラスメント)などの人権問題、家庭崩壊、失業、貧困などの要因にもなっています。

 これらは、アルコールの薬物としての「依存性」「致酔性(中枢神経の抑制作用)」「臓器毒性」「催奇性」などによってもたらされます。その特徴は、飲酒者個人だけでなく、家族や周囲の人々、社会全体に深刻な影響をもたらすことです。これら他者への有害性により、英国の薬物関連独立科学委員会では、20種の薬物のうちアルコールを最も有害な薬物としているほどです。

 2010年、WHOは第63回総会で、「世界でおよそ250万人がアルコールが原因で死亡しており、対策を怠れば事態はますます深刻化する」とし、「アルコールの有害な使用を低減する世界戦略」を全会一致で採択しました。そして、「国が適切な行動をとれば、アルコールの有害な使用は低減できる」と10分野の対策メニューを示し、施策の推進と報告を義務づけました。今、世界の国々は、次々と対策を打ち出しています。

 わが国でも、今回成立した「アルコール健康障害対策基本法」の第1条(目的条文)で、「酒類が国民の生活に豊かさと潤い を与えるものであるとともに、酒類に関する伝統と文化が国民の生活に深く浸透している」一方で、「不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となり、アルコール健康障害 は、本人の健康の問題であるのみならず、その家族への深刻な影響や重大な社会問題を生じさせる危険性が高い」としており、飲酒の効用とともに、大きな弊害もあることを指摘しています。

 アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク(通称:アル法ネット)のホームペ ージによれば、これまで「未成年者飲酒禁止法」「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」など、飲酒を規制する法律や酩酊者の保護に関する法律はありま したが、アルコール問題に対する包括的な法律はありませんでした。

 今回の基本法の成立により、アルコール健康障害対策の総合的かつ計画的な推進、アルコール健康障害を有する人に対する支援の充実が図られることが求められます。また、すべての人が公私両面で「飲酒のし方」を見直すことも大切でしょう。

(この項終わり)