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労災認定で「心の病気」が過去最多、自殺者も「心の病気が」過去最多

2013.7.2

 6月21日の厚生労働省報道発表によると、精神障害が原因の労災請求件数は年々増加しており、平成23年度(2011年度)は同請求による労災認定数が過去最高となったことがわかりました。

 精神障害の労災請求件数の多い職種は、1位が事務従事者で234人、2位が商品販売従事者78人、3位が営業職業従事者5人と続きます。そのうち労災認定人数は、一般事務従事者65人、情報処理・通信技術者30人、商品販売従事者29人、自動車運転従事者28人、営業職業従事者24人の順で多いとのことです。

 これを出来事別にみると、時間外労働時間数(1か月平均)別で、平成23年度は325人(うち自殺、自殺未遂66人含む)から平成24年度は475人(うち自殺、自殺未遂93人含む)と増加しています。

 内訳は、時間外労働が20時間未満だったケースが、前年度の63人(うち自殺、未遂を含む4人)に対し、平成24年度には97人(うち自殺、未遂を3人含む)。20時間以上40時間未満のケースは19人から25人。60時間以上80時間未満は15人から29人となっています。160時間以上の時間外労働もみられ、前年度の21人(うち自殺、自殺未遂7人含む)から24年度には46人(うち自殺、自殺未遂7人含む)へと2倍以上に増加しています。いずれのケースも前年度を大きく上回り、精神障害を主因とする労災認定には時間外労働時間の長さが深く関係しているのではないかと推察できます。

 就労形態別にみると、正規職員・従業員が前年度は303人(うち自殺、66人含む)が平成24年度には433人(うち自殺92人)でした。次いで多かったのがパート・アルバイトで、10人から17人に増加。3番目が契約社員で7人から11人へ、4番目が派遣社員で3人が10人へと、やはりいずれも前年より増加しています。痛ましいのは自殺者の増加も顕著にみられることです。

 精神障害で労災認定された475人のうち、精神障害発症の原因は「仕事内容・仕事量の変化」が59人で最も多く、ついで、「嫌がらせ、いじめ、暴行」(パワハラを含む)が55人、「悲惨な事故や災害の体験・目撃」が51人と続いています。前年度と比較すると、「嫌がらせ、いじめ、暴行」が15人、「上司とのトラブル」が19人、「セクハラを受けた」が18人増加しており、職場での対人関係の影響で精神障害になる人が増加しているようです。

 このような精神障害の労災認定増加をどう考えたらよいのでしょうか。

 厚生労働省職業病認定対策室は「11年末に精神疾患認定の新基準を作り、セクハラなど事例を細かく示したため、認定が増えたのではないか」と説明する一方、「社会的背景はまだ分析できていない」としています。また、過労死弁護団の弁護士は、「比較的若い年代の人が精神疾患と労災認定されている例が目立ち、肉体的にも疲弊している50代ではなく若くて元気なはずの若年者が多いことは深刻にうけとめるべきだ」と言います。

 認定基準が見直されて審査の迅速化や効率化がうたわれ、半年以内の労災認定の決定を目指したために、審査に必要とした精神科医の合議による判定を、労災認定の判断が難しい場合に限っていることも、労災認定数を増加させているのかもしれません。同時に、労働基準監督署の窓口では「期限が決められ、処理に忙殺される」との声も聞かれ、労災認定の審査の迅速化に懸念の声もあります。

 今後、調査のクロス集計の結果、精神障害と労災認定の増加の原因が見えてくるかもしれません。政策に反映できるよう望まれます。

(この項終わり)