共同センターロゴ小今月の話題(2013年6月)

大学医学部が職場のメンタルへルス対策を支援

2013.6.3

 慶応大学医学部が、今年6月をめどに事業・研究拠点となる「ストレス研究センター」を設置し、契約した企業のメンタルヘルス対策を支援するという報道がありました。精神科医とチームを組む臨床心理士が企業に常駐し、様々なサービスを提供します。

 厚生労働省が実施した平成23年「労働安全衛生基本調査」の結果によると、メンタルヘルス不調が原因で1カ月以上休職や退職した労働者のうち職場復帰できた労働者は53.8%でした。一方、労働者や管理監督者への教育研修・情報提供などのメンタルへルスケアに取り組んでいる事業所の割合は43.6%となっています。

 事業所がケアに取り組んでいない理由としては、「必要性を感じない」(48.4%)が最も多く、「専門スタッフがいない」(22.1%)、「取り組み方がわからない」(20.1%)という回答が続いています。

 この調査結果を見ても、職場のメンタルへルス不調者に対して具体的な対策を行っていない企業は多いようです。

 慶応大学医学部は、企業に精神科医2名と臨床心理士3名からなるチームを派遣し、精神科医は週2回ずつ企業に勤務、臨床心理士は常駐させるなどして、休職した社員の職場復帰を支援するそうです。具体的には、休職中の社員と面談し、仕事に復帰できる状態かどうかを判断したり、復帰する社員に合わせた勤務時間や業務内容などの就業プログラムを作成します。

 同大医学部では、すでに2009年度から大手電機メーカー1社と契約しており、拠点設置で事業を広げるようです。企業は精神科医らの手厚い支援を受けることで社員の早期職場復帰やうつ病対応が期待でき、大学側は企業の了解を得てメンタルヘルスに関するデータを集め、うつ病の治療や予防の研究に役立てることができるため、お互いにとってメリットがあるとのことです。

 今後、労働者の精神面への支援策が多方面から提供され、会社側がどこに相談するか選択できるようになれば、職場のメンタルヘルス不調者への大きな支援となりそうです。

(この項終わり)