共同センターロゴ小今月の話題(2011年8月)

震災の影響による労災死亡の認定が1000人を超す

2011.8.1

 勤務中や通勤中などに被災し死亡したとして労災認定し、遺族補償の支給を決定した件数(7月16日現在)が、1001人(申請件数1337人)に上ったと厚生労働省が発表しました。

 宮城県636人、岩手県269人、福島県79人、その他の都道府県17人の順に多くなっています。また、震災後の復旧・復興の日々で、過労死する人の報告も過労死弁護団全国連絡会議から報告されています。

 震災の影響で仕事量が増えたにもかかわらず、人員の不足で過重労働が続き、突然死や自殺に追い込まれる「震災過労死」の事例が、全国で10件以上あります。震災過労死は、被災地のみならず被災地以外の全国で起きています。震災の影響で業務が増え、人員も少なく一人ひとりの労働者や公務員への負担が大きくなっているからです。

 たとえば、大手通信機器メーカーに勤務する課長(45歳)は、震災後日常の業務に加えて、会社の災害対策本部の仕事が加わり、毎日午前7時に出勤し、夜遅くまで社員の安否確認などに追われていました。また、外国人の上司2名が原発事故を理由に本国に引き上げたことから、上司2名分の仕事も行わざるを得なくなりました。

 このような状況では、自宅でも仕事をせざるを得ず、自宅で海外との電話会議を夜中の12時過ぎまで行う事もありました。週末も自宅で資料作成をしていたので、まったく身体を休める暇がありませんでした。 このように震災発生後、時間外労働や深夜労働が急増し、精神的なストレスも強くなった結果、震災発生から2カ月後、突然の心停止で死亡しました。

 また、過重な労働負担により、うつ病などの精神障害を起こし自殺に至った「過労自殺」のケースも報告されています。 

 自治体の職員(男性)が震災後、全く土地勘のない地域の震災対応の担当になり、被災者の支援で毎日多忙を極めていました。しかし、土地勘のない地域を担当したため、地元住民の状況を正しく理解していないなどのクレームが被災者から殺到し、その結果、うつ病となり自殺してしまいました。

 被災地の復旧・復興のためとはいえ、そのために働く人の健康や命が犠牲になるのは本当に残念です。過労死や過労自殺を未然に防ぐことが何より大切です。震災で負担がより多くかかっている労働者の様子は、職場や家庭でより注意し、負担の軽減を図るための人員を補充したり、職務を分担するなどの早めの対策を採るように努めてください。

(この項終わり)