共同センターロゴ小今月の話題(2010年7月)

「メンタルヘルス対策」をめぐる動き

2010.7.2

 日本における自殺者数は、近年、3万人を超える数で推移していますが、そのうち約2500人の原因、動機は「勤務問題」によるものだとされています。また、精神障害等による労災認定件数も増加傾向にあり、仕事や職業生活に強いストレスを感じている労働者は約6割に上るとの調査結果もあるようです。厚生労働省の調査では、うつ病患者を含む「気分障害」の患者は100万人を超えているそうです。

 そのような状況の中、厚生労働省に設置された「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」(学者、医師、弁護士などで構成)が、5月下旬に初めての会合を開きました。

 この検討会においては、

  1. メンタルヘルス不調者を把握する方法について、具体的には、労働安全衛生法に基づく定期健康診断において、労働者が不利益を被らないように配慮をしつつ、効果的にメンタルヘルス不調者を把握する方法について検討していくとしています。
  2. 不調者の把握後の作業転換・職場復帰などの対応方法を検討するとしています。

 メンタルヘルス不調者の把握後、会社による労働時間の短縮、作業の転換、休業、職場復帰等の対応が適切に行われるように、外部機関の活用や医師の確保に関する制度等について検討していくとしています。

 労働基準監督署では、平成22年度においては、「メンタルヘルス対策の具体的な取組みについての事業場への指導・助言」を特に強化する方針を示しています。

 企業としても、メンタルヘルス不調者が発生しないための取組み、仮に不調者が発生してしまった場合の対応に関してのルール作り(「休職制度」「職場復帰制度」「リハビリ勤務制度」等の規定化)など、対応が急務となっている状況です。

また、うつ病の他にバーンアウト(燃えつき症候群)と呼ばれる症状があります。バーンアウト(燃え尽き)は、徐々に進行するプロセスであり、対応をあやまれば、職業生活だけでなく人生を破壊するほどの威力を持つと言われています。

 これは疾病ではなく、あくまで症候群ですが、家族関係の破綻、引きこもり、飲酒や薬物問題、うつ、自殺企図などの背景ともなるそうです。バーンアウトの「症状」は、休みをとっても改善しない心身の消耗感、自分の価値や仕事の能力への疑念、変化への抵抗、ちょっとしたことへの過敏な反応、周囲への怒りや恨み、対人関係の苦痛、などがあげられます。 

 こうした状態が起きるリスクが高いのは、次のような3つの条件が重なったときだといわれています。
  1. 手を抜けない大変な状態が続く
  2. いくらがんばっても報われない
  3. 使命感や責任感、思い入れが強い 

 当然ながら、適当でいいやとドライに割り切って仕事をする人よりも、その仕事に意義を感じて一生けんめいになり、かつ限界になってもがんばってしまう力のある人が、燃え尽きに陥るリスクが高いそうです。

 このような症状に陥らないための予防対策も今後の大きな検討課題ではないでしょうか。

(この項終わり)