共同センターロゴ小今月の話題(2010年3月)

積立不足でも厚生年金基金の解散が可能に (年金問題を考える その9)

2010.3.1

  • その1<第49回(2007.7.2)
  • その2<第53回(2007.11.1)
  • その3<第57回(2008.3.5)
  • その4<第61回(2008.7.1)
  • その5<第65回(2008.12.3)
  • その6<第68回(2009.3.5)
  • その7<第69回(2009.4.2)
  • その8<第73回(2009.8.1)
  •  厚生労働省は、財政難の厚生年金基金(いわゆる「特定基金」)を対象として、年金資金が積立不足のままであっても解散することができる特例措置を、2011年から導入する方針を明らかにしました。同省では、厚生年金保険法などの改正案を通常国会に提出する模様ですが、成立すれば、運用低迷などで存続を望まない基金は解散がしやすくなります。

     厚生年金基金は約465万人が加入している代表的な企業年金で、公的年金の「2階部分」である厚生年金の一部の運用を代行しています。ただ、運用環境の悪化に伴って代行部分の年金資産が目減りしているため、積立不足に陥る基金が急増しており、格付け投資情報センター(R&I)の調査によれば、2009年3月末時点で78.2%の基金が積立不足となっているそうです。

     現在、代行部分の積立不足を一括払いで解消しなければ基金の解散は認められていません。そのため、穴埋めの資金がないために解散できず、年を追うごとに資産の劣化が進む悪循環に陥る基金が後を絶ちません。

     特定基金とは、解散しようとする日において保有資産(純資産額)が最低責任準備金を下回っていると見込まれる厚生年金基金のことをいいます。また、最低責任準備金とは、厚生年金基金が解散した場合に、代行部分の給付の原資として企業年金連合会に返還する責任準備金(将来の給付に備えて現時点で保有しておかなければならない金額のこと)に相当する額のことをいいます。

     今回の特例では、基金解散後に、基金の資産を預かる企業年金連合会に、母体企業が積立不足分を分割払いで返済することを認めるものとなっています。返済期間は原則5年とされていますが、10年まで可能となっています。これにより、早期に解散したほうが加入者の利益につながる場合もあり、各基金の選択肢が増えることとなります。

     しかし、このような特例措置でパッチワーク状態の年金制度は、そのものの抜本的改革なくして、安心して年をとれない国になってしまっているのが生活実感なのではないでしょうか。年金の建物や組織名だけの変化ではなく、根本的な年金制度改革が望まれます。

    (この項終わり)