公的年金の運用損失が過去最悪に(年金問題を考える その8)
2009.8.1
公的年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2008年度の市場運用利回りがマイナス10.03%だったことがわかりました。
GPIFは、厚生労働大臣から委託され、国民年金と厚生年金の年金積立金の管理および運用を行っています。積立金は平成12年度までは全額を旧資金運用部に預託することが義務付けられていましたが、平成13年4月に財政投融資制度改革が行われ、厚生労働大臣による自主運用が実施されています。この改革により、積立金は一部を除いて厚生労働大臣からGPIFへ寄託されることとなりました。
そして、今年3月末の運用資産総額は約117兆円で、このうち市場運用分が約92兆円を占めており、資産構成割合は国内債権が67%、国内株式が12%、外国債券が11%、外国株式が10%となっています。
今回の運用損失は過去最悪の9兆6,670億円で、特に第2および第3四半期の落ち込みが大きく響いています。これは、リーマンショック等により拡大した金融危機とその実体経済への波及による急激な景気減速から内外の株式市場が大幅に下落したことに加え、対ユーロを中心に為替市場で急速に円高が進んだことが影響しています。
中でも、運用分の利回りの成績が最も悪かったのが、外国株式のマイナス42.21%、次いで国内株式のマイナス35.55%です。その結果、平成19年度末に7兆4180億円あった累積黒字は、平成20年度末に1兆9908億円の累積赤字に転落し、5年ぶりに累損を抱えることになりました。
日本の場合は、債権での運用が主体なため、海外に比べると今回の金融・経済危機の影響は比較的小さかった面もありますが、運用利回りが好転しないとさらなる積立金不足の問題を引き起こす可能性が潜んでおり、企業や労働者の将来に様々な影響を与えることにもなります。
(この項終わり)