一般用医薬品販売に関する規制緩和
2009.7.1
今年6月から「改正薬事法」が施行され、これまで薬剤師に限られていた一般用医薬品(大衆薬)販売の規制緩和がなされました。深夜の急病等の際も、今まで購入することができなかった薬を手に入れやすくなり、それに伴い消費者にとっては多くの利点が期待されますが、併せて懸念される問題もあります。
新しい制度では、一般用医薬品を副作用リスクなどに応じて「第一類」から「第三類」までの3段階に分類します。胃腸薬等のリスクの高い第一類に分類される医薬品の販売については従来通り薬剤師の常駐を必須とするものの、リスクの低い第二類、第三類の医薬品については新資格の「登録販売者」を置けば販売ができるというものです。第二類には風邪薬等、第三類にはビタミン剤等が含まれます。
このため第二類、第三類に含まれる医薬品はコンビニエンスストアや24時間営業のスーパーなどでの購入が容易になり、急な発熱や腹痛などの場合にも時間を気にせず医薬品を購入できるようになります。大衆薬の9割はここに含まれるといいますから、購入できる場所が増えれば近隣の店舗で販売競争も激化し、同じ医薬品が今までよりも安価に購入できるようになるかも知れません。
事実、大手スーパーなどでは、すでに一般メーカー品より1〜2割安い大衆薬の新製品販売を開始しています。これに対抗してドラッグストア業界大手なども、登録販売者を活用して24時間営業の店舗を増やすとしています。
一方、これまでインターネットなど通信販売で大衆薬を売っていた業界は、猛反発しています。対面販売をしないリスクなどが指摘され、通信販売で扱える商品が原則的に「第三類」に限定されてしまうからです。ネット販売を行っていた大手会社は、今年5月末に「営業権の侵害」を理由に国に対して訴訟を起こしました。他のネット業者からも提訴の動きが広がる可能性があるようです。
2年後の改正薬事法完全施行に向けて経過措置はあるものの、今までネット購入をしていた離島の居住者や特定の薬を継続して利用していた人にとっては、医薬品の入手が困難になる側面があります。自身の身体に関わることであり、今後どう対応していくかが問題となります。
店舗での販売に関しても「登録販売者にどこまで症状を相談できるかが不安」という声が上がっています。体質や体調に合わない医薬品を安易に服用してしまう可能性も懸念されており、利便性を良くしても安全性がおろそかになってしまっては本末転倒だという意見もあります。
自分の身体を守るために、消費者自身が納得したうえで医薬品の購入方法を選択する必要があると言えるでしょう。
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