年金問題を考える その6
2009.3.5
- その1<第49回(2007.7.2)>
- その2<第53回(2007.11.1)>
- その3<第57回(2008.3.5)>
- その4<第61回(2008.7.1)>
- その5<第65回(2008.12.3)>
社会保険庁が「宙に浮いた」年金記録の持ち主を特定するために送付した「ねんきん特別便」。その後の状況はどうなっているのでしょうか。
「ねんきん特別便」には、2008年3月までに記録漏れの被害者と思われる1,030万人に送った「名寄せ便」と、2008年4月から10月末までに残りのすべての受給者、加入者9,843万人に送った「全員便」の2種類があります。
社会保険庁は、訂正の必要がなくても回答するように呼びかけてきましたが、同庁の調べよると、「名寄せ便に」対して回答を寄せたのは、昨年末時点で31%(316万人)に留まっています。「全員便」でも、回答があったのは47%(4,615万人)。特別便全体で見ても、昨年10月末時点で46%が未回答の状態です。送付先の転居などで届いないものも278万通あるという結果になっています。
同庁は「訂正の必要がないため回答しない人が少なくない」と見ていますが、記録漏れに気付いていない可能性もあるため、未回答者の一部に対して、さらに回答を求める「はがき」を出しています。
また、今年4月以降、加入者全員に記録ミスのおそれがある部分への指摘を含む「ねんきん定期便」を送り、再検討を促す方針を打ち出しています。
記録漏れを見つけた場合、証拠をもとに社会保険事務所に申し出れば、記録の修正がなされます。明確な証拠がなければ、総務省の「年金記録確認第三者委員会」に申し出て、記録回復の可否に関する審査を受けることができます。
年金受給者にとっては、社会保険事務所や第三者委員会で記録回復を認める決定が下されても、実際に年金が支給されるまでには時間がかかります。記録訂正が認められれば「再裁定」と呼ばれる実際の年金額を計算する作業に移行しますが、再裁定の事務処理を担う社会保険業務センターの人手不足による未処理件数も多いようで、問題のひとつとなっています。
また、昨年から、社会保険庁職員による厚生年金の標準報酬月額の改ざんなど年金記録に関するずさんな管理が発覚し、「年金記録問題」は一向に解決せず、制度に対する不信感が強くなっています。送付された年金記録の通知書を今一度確認し、不明点は社会保険事務所に問い合わせるなど、「自分の年金は自分で守る」という意識が必要なのかもしれません。
(この項終わり)