共同センターロゴ小今月の話題(2008年3月)

「年金問題を考える」その3

2008.3.5

 誰のものかわからない、宙に浮いた年金記録などおよそ5,000万件もある公的年金の記録漏れ問題の解明作業が、出足からつまずいています。年金記録の確認を促す「ねんきん特別便」を送り始めてから約2カ月がたちますが、年金記録の統合作業はとても順調とはいえません。社会保険庁では昨年12月末までに約48万通のねんきん特別便を送付しましたが、記録訂正の申出があったのは2月初旬頃までで約3万6,000件。全体のわずか7%程度です。

 このことは「意外と問題が少ない」と考えるより、「ねんきん特別便を受け取っても問題があるか判断できない人がほとんどである」と考えるのが妥当でしょう。

 ねんきん特別便は、まずは名寄せ作業の結果、基礎年金番号の記録と結びつく可能性のある記録が出てきた人を対象に送られました。この人たちは、「記録漏れ濃厚」と社会保険庁が見込んだ受給者で、記録が回復されれば受け取る年金額も増えるのですから、申出も多く寄せられるだろうと見込んでいたわけです。ところが、申出件数が予想外に少なかったことに加え、専用の電話相談も5万数千件程度にとどまっているなど、記録漏れ問題の全面解決にはほど遠い状態です。

 また、保険料を納めた証拠がない人への年金給付を審査する、総務省の年金記録確認第三者委員会の作業も遅れ気味です。昨年末の時点で約3万5,000件の異議申立てがありましたが、何らかの結果が出たものは4%程度にとどまっています。慎重に審議を進めていることもあり、判定作業に時間がかかっています。

 ねんきん特別便の予想外の低調ぶりについて、社会保険庁は「年末年始で出足が鈍かった」と分析していますが、果たして理由はそれだけでしょうか。

 該当者の反応が鈍い背景には、年金制度の運営方法がわかりにくいという側面があります。年金記録が正しいかどうかは、自ら確認する必要があります。記録を訂正する場合には、抜けている記録を修正するための証拠を添えて、社会保険事務所に修正手続を求める必要があります。年金制度の仕組みがわかりにくいため、理解できずに放置している高齢者が相当数いるとみられています。ねんきん特別便は受け取ったものの、記録統合をあきらめているケースもあるようです。

 今なお、社会保険庁は年金の申立てについて「申請主義」を原則としていますが、このままでは解決できません。このような社会保険庁の体質は、批判されても仕方がありません。制度の運営や管理の体制を立て直さなければ、延々と同じ混乱が繰り返えされるだけでしょう。再考が望まれるところです。

(この項終わり)