共同センターロゴ小今月の話題(2007年7月)

「年金問題」を考える

2007.7.2

 今、「消えた年金記録」問題、「宙に浮いた年金」問題など、年金をめぐってさまざまな問題が起きています。国民が何故怒っているかというと、掛けた年金の記録がきちんと管理されなかった結果、掛けた期間分、掛けた金額(厚生年金の場合)、の年金が支払われない人がいたことです。大きな理由は申請(請求)方式にあります。これまで、納付記録がない場合は納付した期間を自分で証明しなければならなかったのです。ところが、実際には年金記録管理上の事務的なミスや入力ミスが原因で記録が見つからないケースが非常に多いのです。

 年金制度は明治時代の兵隊の恩給制度から始まり、戦中の昭和17年(1942年)には国民生活が苦しい中、労働者年金保険制度として発足しました。当時女性は適用除外でしたが、昭和19年(1944年)に適用拡大されました。その後、共済年金や船員年金、厚生年金、国民年金など、各種の年金制度がばらばらに導入された結果、担当官庁も別、年金番号も別という状況に陥ったのです。

  さらに、被保険者が住所変更、氏名変更(婚姻等で)、転職などをした場合にも、新しい年金番号を受けることになり、ひとりでいくつもの年金番号を持つ人が増えました。そこで国は、平成9年(1997年)に一人にひとつの基礎年金番号を割り当て、年金記録を一元化しようとしました。ところが、この一元化作業に失敗したようなのです。

 この複雑な年金制度に携わっていたのが厚生労働省(旧厚生省)、社会保険庁、社会保険事務所、地方自治体です。その管理側で、職員の横領、電算化・一元化の過程での事務的ミス(生年月日・性別・氏名の読み方)や年金記録書類破棄等と、連日報道で指摘される不祥事が発覚したのです。

 この事態に不安を覚える私たちに何ができるでしょうか。

 転職、転勤、転居経験のある人、また、現在年金を受け取っている人で自分の年金受給履歴に疑問のある人、元会社員で1986年以降専業主婦になった女性は、ご自分の年金記録を調べてみることをお勧めします。年金記録にもし登録漏れ等があっても、あわてることはありません。きちんと納めていれば記録はどこかにありますし、探し出し統一すればよいのです。

年金記録を調べるときの注意点

  1. 自分のすべての年金番号が基礎年金番号に統一されているか確認します。そのために、自分の職歴、移転した住所等の履歴の一覧表を作るとよいでしょう。

  2. 厚生年金記録は、平成8年(1996年)ごろまでは氏名、年齢、生年月日はデータとしてありますが、住所データが含まれていません。転職や氏名変更がある場合、番号の照合には確認が必要となります。

  3. 国民年金記録には住所データが付随していますが、転居の記録がないため過去の番号を照合するには本人が転居歴を伝える必要があります。近年の市町村合併で照合しにくくなっている可能性もあります。

  4. 昭和61年(1986年)4月から会社員の妻は社会保険料を払わなくとも第3号被保険者として年金の支給対象者になりました。それ以前、共済組合加入の事業所に勤めていた人や会社に勤めていて結婚して姓が変わった人は、年金番号が統一されているかどうか確認が必要です。

どこで調べるの?

  • 厚生年金記録は勤務先のある社会保険事務所

  • 国民年金記録は現住所のある社会保険事務所

  • 転職した人の厚生年金記録は前の勤務先の最寄りの社会保険事務所

  • 転居した人の国民年金記録は転居前の住所の最寄りの社会保険事務所

 また、以前勤めていた会社が年金の記録を一括管理している場合もあります。事前に勤務先に自分の年金記録の管理をどこでしているか確認することも大切です。もし、自分の年金記録の調査で疑問が生じた場合は、各種年金相談窓口や社会保険労務士に相談されるのも良いでしょう。

 年金制度は社会保険とも呼ばれ、障害者年金や遺族年金という福祉の側面をもちます。一方老後の生活資金として貯蓄の意味ももちます。しかし、一連の問題で国民の信頼は大きく揺らぐこととなりました。もはや、年金改革は単に組織いじりでは解決できそうにありません。年金を含めた社会保障の財源、徴収主体、管理体制などは歳入面と共に解決しなければならないことは、誰の目にも明らかです。国が国民にとってよりよい対応策を見つけ出し、実行に移せるかどうか、一緒に見届けましょう。

(この項終わり)