共同センターロゴ小今月の話題(2007年4月)

出張先飲酒中のケガは労災になるか

2007.4.3

 泊まりがけで出張した社員が、夜、上司と反省会と称して飲酒していたところ、酔って転んでケガをしてしまいした。お酒を飲んでいたとはいえ、出張中の行為です。はたして労災と認められるのでしょうか。

 労働者が負傷や死亡した場合、労災になるか否かは、まず労働基準監督署長などが認定します。認定されず、異議があれば処分取り消しを求める行政訴訟とすることも可能です。

 労災保険法などの解釈によると、労災認定の可否は「業務遂行性」と「業務起因性」という、ふたつの観点から判断されます。「業務遂行性」とは、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態かどうかということ。「業務起因性」とは、業務と傷病との間に相当因果関係が存在するかどうかということです。

出張中は通常よりも業務性の範囲が広い

 飲酒時の労災が認められるかどうかは、「業務遂行性」がどの程度あるかで異なります。通常の就業日であれば、飲酒が業務性を帯びるのは、会社が費用を負担した接待や、出席が義務付けられた会合などに限られます。それ以外は上司との飲酒でも業務性が認められる可能性はほとんどないといえます。

 その一方、出張中は仕事後の飲酒でも通常業務より業務性が認められるケースが広がります。出張中は上司が同行しているかどうかを問わず、全般的に事業主の支配下にあると考えられることが多くなっています。これには、食事など現地で必要な行為も含まれます。宿舎内での飲酒や、飲食施設がない宿舎から近所へ出かけて飲酒した場合も業務中と認められる可能性は高いのです。

裁判例では

 1993年の福岡高裁判決では、出張中に宿泊施設内で同僚と飲酒し酔って階段で足を踏み外し、頭部を強打して死亡した会社員について労災を認定しました。「宿泊施設での飲酒は慰労と懇親の趣旨であり、出張に伴う行為」と判断されたのです。

 一方で、出張時でも事故原因が業務と無関係なら労災と認められないケースもあります。

 1999年の東京地裁判決は、出張先での送別会で泥酔し一度宿舎に戻った後、近くの川で全裸で水死しているのを発見された会社員について「事故は自らの意思で外出した結果で、業務起因性がなく労災とはいえない」と判断しました。

 いくら出張中の行為が通常より広く業務性を認められるとはいえ、仕事から大きく逸脱した状態では労災と認められない可能性もあるわけです。

  いずれにせよ飲酒中の行為は、すべて自己責任が伴います。お酒はほどほどにするのがよいでしょう。

(この項終わり)