共同センターロゴ小今月の話題(2000年8月)

企画業務型裁量労働制(新しい裁量労働制が施行:その5<最終回>)

(先月からの続きです。先月分はココから表示できます。)

 新しい裁量労働制が平成12年4月1日より施行されています。

 この企画業務型裁量労働制に対する、日本労働組合総連合会と日本経営者団体連盟の基本的なスタンスは次のとおりです。

日本労働組合総連合会のスタンス:

  1. 対象労働者の保護を図ることが必要。
    • 働き過ぎの防止
    • 実際の労働時間を反映したみなし時間の設定
    • 構成、公平、透明性、納得性を確保した評価制度
  2. ホワイトカラー一般に拡大しないよう対象業務、対象労働者の厳格な適用。
    • 実際に業務遂行の手段と時間配分の決定権限があるか否かが判断基準となるべき。

日本経営者団体連盟のスタンス:

裁量労働制の拡充が必要。

  1. 裁量労働制の普及を図ることが大切。
    • ホワイトカラーの業務については、業種、企業により職務形態は多様であり、企業の実態に合わせた制度の構築を可能にすることが制度の普及にとって不可欠である。
    • 具体的な個々の対象労働者の範囲、みなし労働時間やその他労働条件の設定等については、個々の労使委員会での協議に委ねるべきである。
    • 細部にわたり使用者を義務づける指針は、企画業務型裁量労働制普及の妨げとなる。指針は新たな使用者に義務づけを行うものではなく、制度の大枠を示す例示にとどめるべきである。指針による新たな義務づけや行政の監督強化は不要であり、制度のフレキシビリティを損なわないような配慮が必要である。
  2. あるべき裁量労働制の姿はアメリカの「ホワイトカラーイグゼンプション制」
    • 今回の企画業務型裁量労働制も「イグゼンプション制」へ向けての第一歩であると考える。
      (「イグゼンプション制」については下で説明しています。)

労働省の指針の問題点

 労使それぞれの立場により、裁量労働制に対するスタンスには大きな違いがあります。5月に紹介した労働省の指針はその中間に位置するスタンスですが、この指針は、残念ながらせっかくの裁量労働制を生殺しにしているように感じられてなりません。

  1. 対象労働者の範囲は、ホワイトカラーの行う業務、企画、立案、調査、分析等の業務にそれぞれ該当するすべの労働者に拡大すべきである。

     現行の企画業務裁量型労働制における、企画立案、調査、分析を「一連とする業務」とは、何を基準にして判断するのでしょうか。厳密に考えると、これらの業務を一連とするような総合的な業務に携わる労働者の存在は、はなはだ少ないと思われます。

  2. 対象事業場の範囲は、「取締役が常勤している事業場」から「業務を執行している執行理事等が常勤している事業場」に拡大すべきである。

     昨今、企業は社外取締役の比率を高めつつ取締役の数を減少して事業方針の決定を迅速に進める傾向にあります。こうした企業では、「取締役が常勤している事業場」が本社のみ、もしくはきわめて少ないと考えられます。
    裁量労働制の主旨から、対象となる事業場は「執行理事等が常勤している」とした方が実情に則しているように思えます。「取締役の常勤している事業場」と「業務を執行する理事等が常勤している事業場」との間に、労働環境の相違があるとは考えられません。

  3. みなし労働時間は、労使で合意した労働時間とすべきである。

     みなし労働時間の判断基準を、「当該業務の遂行に必要とされる時間」や「平均的時間」などとする意見もありますが、対象となる労働者の業務遂行に対する時間配分は不規則かつ長時間に渡る傾向にあり、前もって労働時間を推測するのは不可能だと思われます。賃金に関しては対象労働者の実績賃金で解決すべき問題と思われます。

  4. 健康管理と苦情処理機関は、すべての企業で拡充すべきである。

     健康管理や苦情処理機関の拡充に関しては、企画業務裁量労働制であるかどうかに関わらず、すべての事業場で実施すべきであると思われます。産業医、労働安全委員会制度を拡充することはもちろんのこと、精神面を担当する医師や専門カウンセラー制度も事業場ごとに必要だと考えます。また、苦情処理機関については、労働組合の無い事業場で、特に設置の必要性を痛感します。

終わりに

 どのような労働政策も、労働者の勤労意欲と向上意欲を高めるための政策であるべきです。常に労働者の生活の向上、健康の増進、生きがいの拡充に役立つ方向で検討することが大切です。
共同センターも、個別の労働者の意思を最大限に尊重する労働環境と社会を実現できるよう、お手伝いしていきたいと思います。

注:「イグゼンプション制」

「規制の適用を除外する制度」です。

裁量労働制は、実際に働いた時間にかかわらず協定で定めた時間だけ働いたものとみなす制度です。現在は、時間外労働、休日労働、休暇および深夜労働に関して従来の規制を適用していますが、休日の付与といった点は別として、こうした規制のあり方自体を見直し、規制の適用を除外しようというのが、「イグゼンプション方式」です。

イグゼンプション(exemption)とは、英語で「免除」を意味します。

(本文から移動してきた場合は、ブラウザの「戻る」ボタンで戻れます。)

以上。裁量労働制については、今回で終了します。

(この項終わり)